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漢方薬は有効か

 

推奨
漢方薬は予防薬あるいは急性期治療薬として長期にわたり使用されており,経験的あるいは伝統的には効果・安全性の両面から有用であると評価されている.これらを裏付ける科学的エビデンスも近年集積されつつあり,予防薬として推奨可能である
推奨のグレード
B  
 

 

背景・目的

漢方薬は経験的・伝統的に使用されてきたため,基礎研究レベル・臨床研究レベルともに科学的なエビデンスは不足している.頭痛に対する漢方薬の効果について述べられた論文はほとんどが症例報告であり,エビデンスとして評価されうるもの自体少ない.しかし,その経験・伝統から,漢方薬が慢性頭痛の予防薬として有用であることは否定しがたい.ここでは症例集積研究以上のものを挙げた.厚労省班研究によりエビデンスが得られており、北里研究所等における研究成果も補足的に加えた.なお,海外の文献はない.


解説・エビデンス

処方ごとに解説する.
1 呉茱萸湯 1)2)3)
症例集積研究が 2 件と漢方薬同士のランダム化比較試験が 1 件である.いずれもエビデンスレベルは低いが,呉茱萸湯の高い有用性が示されている.北里研究所等で研究段階のレスポンダー限定多施設無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験ではレスポンダーに対する有用性が認められた 8).漢方薬の特性にかなったデザインによる研究で有用性が示されたことは価値があると考えられるが,レスポンダーの選定基準等,問題もある.
2 桂枝人参湯 4)
漢方薬同士のランダム化比較試験が 1 件と漢方薬同士の非ランダム化クロスオーバー比較試験が 1 件である.前者は漢方薬同士であるため漢方薬の有用性を示すエビデンスとしてはレベルが低いが,頭痛改善に対する高い効果が示されている.後者はデザインに問題があり,漢方薬同士であるためエビデンスレベルは低い.さらに評価方法も問題である.
3 釣藤散 4)5)6)
漢方薬同士の非ランダム化クロスオーバー比較試験が 1 件と症例集積研究が 2 件である.前者については 2. で述べた.後者についてもエビデンスレベルは低いが,釣藤散の有用性は示されている.
4 葛根湯 7)
エビデンスレベルの低い症例集積研究 1 件だけであり,効果も明確でない.
 
以上のように,これまで頭痛に対する漢方薬の効果についてのエビデンスは少ない.漢方薬が有用であることは経験的・伝統的にはほぼ疑いがないので,花輪らの研究 8) のようなさらなるエビデンスの集積が必要である.その際,漢方薬の特性を生かした臨床研究デザインが使用されるべきである.

 

参考文献のリスト

1) 前田浩治他 慢性頭痛に対する呉茱萸湯の効果 漢方医学  1998 ; 22 : 53-57 .
2) 赤嶺真理子 緊張性頭痛に対する呉茱萸湯の有用性 日本東洋心身医学研究   2000 ; 15 : 36-38.
3) 関久友 慢性頭痛に対する呉茱萸湯の効果 - 封筒法による桂枝人参湯との比
  較 - Pharma Medica 1993 ; 12 : 288-291.
4) 松本博之 慢性頭痛に対する桂枝人参湯と釣藤散の有用性に関する研究 
  臨床と研究 1995 ; 72 : 1299-1303.
5) 木村格 脳血管障害患者の慢性頭痛に対するツムラ釣藤散の臨床効果
  Geriat.Med. 1989 ; 27 : 445-449.
6) 高田理 慢性緊張型頭痛に対する釣藤散の有効性について 漢方医学  1998 ;
  22 : 121-124 .
7) 山本光利他 肩頸部のこりに起因する慢性緊張性頭痛に対する葛根湯の臨床効
  果 臨床と研究  1995 ; 72 : 2085-2088.
8) 花輪壽彦他 慢性頭痛に対する呉茱萸湯の効果:レスポンダー限定多施設無作
 為化二重盲検プラセボ対照比較試験

 

検索式・参考にした
二次資料

・検索 DB : 医学中央雑誌刊行会
頭痛&漢方薬 :236
EBM 漢方:医歯薬出版株式会社