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各科の頭痛専門医から取得体験談とメッセージ
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小児科
疋田 敏之
- 出身地
- 東京都
- 卒年度
- 1995年
- 勤務先
- ひきた小児科クリニック/帝京大学医学部小児科
- 出身大学
- 帝京大学
- 趣味/没頭していること
- 美味しいものを食べること、海外の学会への参加、周期性嘔吐症候群と片頭痛に関連する研究
頭痛専門医取得を考慮したきっかけ、動機
私は大学病院に勤務していたときに周期性嘔吐症候群の治療に関して検討していました。検討を始めた理由は、ある重症な症例を診療していたためです。乳児期から様々な予防薬でコントロールに難渋して頻回に入院していた症例がいつの間にか入院しなくなっていました。この症例はバルプロ酸が有効で学童期にバルプロ酸を中止すると入院してきました。そこで、他の周期性嘔吐症候群の患者さんにバルプロ酸を投与して嘔吐発作が軽減するか検討しました。当時から周期性嘔吐症候群の一部の患者さんに抗てんかん薬が有効との報告がありました。しかし、バルプロ酸が有効との報告はありませんでした。このため症例を集めて日本小児神経学会英文紙に報告しました。
周期性嘔吐症候群は嘔吐を主訴としていて、必ずしも頭痛を訴えるわけではありません。しかし、片頭痛に関連する疾患ではないかと考えられていました。このため、海外で片頭痛治療薬であるスマトリプタンが有効であるという症例報告が出てきました。そこで、小児の周期性嘔吐症候群の患者にスマトリプタンを投与して有効である症例がいることを確認し、症例をまとめて国際頭痛学会雑誌に報告しました。
このような検討しているうちに、周期性嘔吐症候群は片頭痛に関連する疾患であることを知り、片頭痛に関して様々なことを調べて頭痛診療ができるようになりました。私は小児神経専門医でしたが、もともと頭痛診療は得意でありませんでした。 頭痛診療に関しては、きちんと頭痛に関して勉強するまでは、頭蓋内腫瘍やら、血管障害やら、頭蓋内感染症やらがなんとなく怖かったのと、大学病院の小児神経外来には頭痛を専門に診療されている諸先輩がいたため必要に迫られることもありませんでした。周期性嘔吐症候群について検討していると片頭痛に関する知識が必要になりました。片頭痛に関して学ぶと頭痛診療に興味を持てるようになりました。今でも頭痛を専ら診療している諸先輩方には劣りますが、少なくとも怖がることはなくなってきました。そして、診療を始めると頭痛をかかえている子どもの多いことがわかりました。
このような理由で頭痛専門医試験を受験してみることにしました。受験することにより片頭痛に限らず様々な頭痛に関して学ぶことができて診断や治療について知識が増えました。私の場合はこのような勉強する機会がないと新しいことを学ばない性格なので、頭痛専門医試験を受診することで新たな知識獲得が出来て診療の幅が広がりました。今のところ小児科医で頭痛専門医となる先生は少なないです。しかし、小児の頭痛は少なくありません。小児科医でも興味を持って頭痛専門医試験を受験していただき、頭痛診療の知識を増やすチャンスとして頂ければ良いなと思っています。
頭痛専門医取得に向けての取り組みや状況
私が頭痛専門医試験を受診しようと考えたときには、現在のような「頭痛専門医試験 問題・解説集」はありませんでした。昔のことでよく覚えていませんが、当時の「国際頭痛分類」、「慢性頭痛の診療ガイドライン」、そして「識る 診る 治す 頭痛のすべて (アクチュアル 脳・神経疾患の臨床)」という頭痛の専門書などを読んで受験に臨みました。私は画像診断が苦手でしたが、きっとクモ膜下出血の画像は出題されるのではないかと考えて重点的に勉強しました。頭痛専門医試験では主に成人の頭痛について出題されます。小児科が専門の私にとっては、主に成人の頭痛に関する書籍から得られる知識は知らないことが多くて興味深く、一部は小児の診療に役に立つ情報でした。幸いなことに試験では覚えていた内容が出題され合格することが出来ました。これから受験される方は「頭痛専門医試験 問題・解説集」を中心に勉強されると思います。そして、余裕があれば最新の「頭痛診療ガイドライン」や頭痛診療の専門書などを読まれるとより頭痛に関して興味が持てるかもしれないと考えます。
どのような頭痛専門医になりたいか、取得したらやりたいこと
私が頭痛専門医になったのは小児科診療所を開業してからでした。頭痛に関しては当然ながら小児の頭痛診療を主に行なっていました。しかし、診療していて小児の片頭痛の患者さんに家族歴を聞くと高率に家族に片頭痛がいることに気がつきました。このため、希望があれば成人の患者さんも診療することにしました。私の開業している桐生市には頭痛専門医は私以外いません。多くの片頭痛患者さんは、そもそも頭痛では医療機関を受診していない、もしくは成人科で頭部MRIなど検査が行なわれていても、異常は無し、と言われただけ、ただの頭痛と診断された、という方が多く片頭痛と診断されている方は少なかったです。そして、鎮痛薬以外の治療はされていないことがほとんどでした。このため、トリプタン、ジタン、各種予防薬、そして現在ではCGRP関連抗体性剤などを使用して改善すると大変喜ばれます。とくにCGRP関連抗体性剤は小児科専門医、小児神経専門医を取得していても頭痛専門医を取得していないと使用することが出来ません(2025年4月の時点)。このため頭痛専門医を取得しておいて良かったなと思います。
また、周期性嘔吐症候群と片頭痛に関しては研究を続けているため、その発表の機会として国際頭痛学会に参加しています。海外の小児頭痛を専門としている先生方と知り合いになり、頭痛に関する情報交換をしたり、現地の美味しいものを食べに行ったりしています。2015年のバレンシア(スペイン)ではパエリア、2017年のバンクーバー(カナダ)では生牡蛎をはじめとした魚介類、2019年のダブリン(アイルランド)ではギネスビール、2021年はCOVID-19でWeb開催でしたが、2023年のソウル(韓国)では焼き肉とあちこちに行き美味しいものを色々食べてきました。国際頭痛学会の中でも小児に関する参加者は多くありませんでした。このため国際頭痛学会で小児科のグループには比較的入り込みやすかったです。遊んでばかりではなく国際頭痛学会の Child and Adolescent Standing Committeeにも加えていただきました。また、2023年の国際頭痛学会では教育講演の演者として招かれました。これは、研究が認められたというより海外の小児科の先生と仲良くしていたために指名されたように思います(違うかも知れませんが)。
そして、日本で普通に学会に参加していると小児科以外の先生と話す機会は限られます。国際学会では日本人同士では話しもしやすいため、小児科以外の頭痛を専門とする先生方と知り合いになることが出来ました。そして、国際頭痛学会では頭痛診療の最前線の話を聞くことができます。なにより、様々な国に遊びに行けて美味しいものが食べられるので、今後も参加したいと考えています。このような活動を通じて頭痛診療の質を高められれば良いなと考えています。