㈵−8
アルゴリズムをどう使用するか

 

推奨
頭痛を主訴として来院した患者についての鑑別診断で重要な点は,まず二次性頭痛のなかでも危険な(致命的な)頭痛を除外することである.次に片頭痛をはじめとする一次性頭痛を診断する.この時,簡易診断アルゴリズムは,実地診療で頭痛診断の手がかりになる有力な手段の一つである
推奨のグレード
  B
 

 

背景・目的

多忙な実地臨床において頭痛診療を効率的に行うには,迅速で簡潔に診断を進めることができるスクリーニングが手助けになる.いかに効率よく診断が可能であるかという点からもいくつかのアルゴリズムが発表されている.


解説・エビデンス

頭痛を主訴として来院した患者についての鑑別診断で重要な点は,まず二次性頭痛のなかでも危険な頭痛を除外することである.この際に,問診,身体所見,神経学的所見が重要で,必要に応じてCTやMRIといった画像診断を施行する.
イギリスの頭痛診療のガイドラインによれば,頭痛の診断に際し,プライマリケア医は「頻度は少ないが危険な頭痛」についての知識ももつことが必要であるとしている 1) .最初に危険な頭痛をスクリーニングで除外し,その後で一次性頭痛の鑑別を行う.
危険な頭痛を診断していく時には,次に示す項目が参考になる.
新規の発症の頭痛,以下の症状に伴って出現する急性の頭痛,すなわち発疹,神経脱落症状,嘔吐,痛みまたは圧痛,事故または頭部外傷,感染,高血圧.また以下のような型の頭痛を有する時,すなわち頭痛のない時や消失した時においても神経学的な異常が改善しない時.
遷延する前兆症状がある時. 5 分以内に最強度に達する超急性の頭痛,6ヶ月未満の経過の神経脱落症状を伴う頭痛.
頭痛がこれまで経験したことがないほどの頭痛,小児(5歳未満)か比較的高齢( 51 歳以上)の発症である時.以上の項目に基づき危険な頭痛の診断のアルゴリズムを作成している(図 1 ).
一次性頭痛の診断に関して実地の臨床医にとって最も重要な質問となるのは,頭痛による支障度と発作の頻度に関連するものである.はじめに危険な頭痛を除外した後に,頭痛が日常生活や活動(仕事,家事,社会活動)にどれほど支障を及ぼすかが重要な質問になる(高度である場合は,片頭痛か慢性連日性頭痛( CDH ; Chronic Daily Headache ),軽度である場合は反復発作性緊張型頭痛または軽度から中等度の片頭痛である).
次に月に頭痛が何日あるかを質問する. 16 日以上は CDH , 15 日以下は片頭痛である.これらの頭痛を診断する際には,短時間持続性頭痛についての鑑別も要する. CDH に対しては,一週間に何日薬を服用するかが問題になる. 2 回以上は薬物乱用頭痛, 2 回未満は薬物乱用頭痛ではない.
片頭痛については,発作が片側の可逆性の感覚障害や同名性の視覚症状を伴うか否かの質問でそのサブタイプを診断する.以上の項目から慢性頭痛のアルゴリズムを作成している(図 2 ).
Pryse-Phillips ら 2) によれば,「毎日の頭痛」,「片側性」,「支障度」について「はい・いいえ」で簡単に答えることができる質問を用いた時,片頭痛の診断は感度 0.86 ,特異度 0.73 ,陽性的中率 0.96 であったとしている.片頭痛の診断のスクリーニングに際し,頭痛の頻度(「毎日頭痛がありますか?」),片側性(「頭痛は片側におこりますか?」),支障度(「頭痛で日常の活動が阻害されますか?」)からなる質問項目がプライマリケアの医師にとって有用と考えられる(図 3 ).しかし,頭痛専門のクリニックを受診するような複数の頭痛を持っている患者では,このアルゴリズムだけでは十分でない.
Maizels ら 3) は,主に「新規の頭痛か,または最近頭痛が変化したか?」,「頭痛は毎日起こるか?」,「頭痛は反復性で支障を及ぼすものか?」の 3 項目によって頭痛を鑑別するアルゴリズムを提案している.また簡単な 3 つの質問からなる片頭痛簡易診断票(スクリーナー)が報告されており診断の見逃しが少なくなるものと考えられる 4)5)
これらのアルゴリズムやスクリーナーは実地の臨床医にとっても片頭痛をはじめとする頭痛の特徴を明らかにするとともにいかに患者が苦しんでいるかを認識させるものにもなる.

 

参考文献のリスト

1)Dowson, A. J., Sender, J., Lipscombe, S., Cady, R. K., Tepper, S. J., Smith, R.,
  Smith, T. R., Taylor, F. R., Boudreau, G. P., van Duijn, N.,P.. Poole , A. C., Baos,
  V. Wober, C.
Establishing principles for migraine management in primary care. Int J
  Clin Pract 2003; 57: 493-507.
2) Pryse-Phillips, W. Aube , M. Gawel, M.Nelson, R. Purdy, A. Wilson, K. .A
  headache diagnosis project. Headache 2002: 42: 728-37.
3) Maizels, M. Burchette, R. Rapid and sensitive paradigm for screening patients with
  headache in primary care settings. Headache 2003: 43: 441-50.


検索式・参考にした
二次資料

・検索 DB : Pub Med ( 04/12/01 )
"headache" OR AND "diagnosis" 18476
AND OR "primary care"203
OR "screening"142

・検索 DB : Pub Med ( 04/12/01 )
"headache" OR AND "algorithms" 75

 

備考1

図1.危険な頭痛の簡易診断アルゴリズム

 

 

備考2

図2.慢性頭痛の簡易診断アルゴリズム

 

備考3

図3.片頭痛の簡易診断アルゴリズム