㈼−3−9
抗うつ薬(アミトリプチリン)は片頭痛の予防に有効か

 

推奨
アミトリプチリンは片頭痛の予防に有用である.低用量( 10〜20mg/日,就寝前)から開始し,効果を確認しながら漸増し10〜60mg/日の投与が推奨される
推奨のグレード
A  

 

背景・目的

慢性頭痛患者は抑うつ状態を併発することがあるが,抗うつ薬の使用により抑うつ状態ばかりでなく頭痛も軽減することが知られており,抑うつ状態にない片頭痛患者においても有用であると考えられている.多くの抗うつ薬は,中枢神経系の神経細胞外のセロトニンやノルエピネフリンの濃度を高めることにより,抗うつ作用を発揮すると考えられている.抗うつ薬の抗片頭痛作用のメカニズムは不明であるが,片頭痛の病態にセロトニンなどの神経伝達物質の関与が示唆されており,古くから各国で使用されている.


解説・エビデンス

三環系抗うつ薬,アミトリプチリンが最もよく検討されており,また,実際に最も広く使用されている.アミトリプチリンには 3件のプラセボを対照としたRCT 1)-4) が行われている.頭痛インデックスおよび片頭痛発作頻度を指標として, 50-150 mg/ 日 を 8 週 4) , 50-100 mg/日を4 週 2) , 30-60 mg/ 日 を 27 週 3) の用量と投与期間で一貫した効果が報告されており,メタアナリシス 5) でも有用性が示されている.
アミトリプチリンとプロプラノロールの比較は 2試験が行われている.アミトリプチリン50-150 mg/ 日 とプロプラノロール 80-240mg/日が8 週間の治療期間の評価でほぼ同等の片頭痛予防効果を示した 4) . アミトリプチリン 25-75 mg/ 日 とプロプラノロール 60-160mg/日を6ヶ月以上にわたり比較検討した報告 6) では,いずれも有効であるが,緊張型頭痛を合併している片頭痛患者では,プロプラノロールよりアミトリプチリンの方が高い有効率を示した.
アミトリプチリンや他の抗うつ薬の抗片頭痛作用が,抗うつ作用を介したものか,独立した作用であるかについて明確な結論は得られていないが, 臨床的な抑うつ状態の並存の有無にかかわらず,アミトリプチリンの慢性頭痛予防効果は確実である 5)
クロミプラミンはプラセボを用いた 2試験の報告があるが有用性は証明されていない.他の3環系抗うつ薬,イミプラミン, ノルトリプチリンはプラセボ対照臨床試験が行われていない.
四環系抗うつ薬,ミアンセリンは 1つのRCT7)があり,ミアンセリン60mg投与により頭痛の程度と頻度が観察期より有意に軽減したが,プラセボとの差は統計学に有意ではなかった.トラゾドンは小児の片頭痛患者において有用性が示されている8).マプロチリン,セチプリンはエビデンスが皆無である.SSRIではfluoxetineで3件のRCTが行われており 9) ,2件で有用性が示されている.本邦で使用可能なフルボキサミンはアミトリプチリンと同等の有効性が示唆 10)  されているが,プラセボとの比較試験は実施されていない.パロキセチンは有効例の報告があるがエビデンスは不十分である.SSRIに関しては今後の検討が必要である.その他,スルピリドは有用性を示差するいくつかの報告があるが,エビデンスは明確でない.
三環系抗うつ薬は,抗コリン作用による副作用(眠気,口渇等)が,よく知られており高頻度に発現するが低用量から用いることにより副作用を軽減することができる 3)

参考文献のリスト

1) Couch JR, Hassanein RS. Amitriptyline in migraine prophylaxis. Arch Neurol
  1979; 36(11):695-699.
2) Couch JR, Ziegler DK, Hassanein R. Amitriptyline in the prophylaxis of migraine.
  Effectiveness and relationship of antimigraine and antidepressant effects.
  Neurology 1976; 26(2):121-127.
3) Gomersall JD, Stuart A. Amitriptyline in migraine prophylaxis. Changes in
  pattern of attacks during a controlled clinical trial. J Neurol Neurosurg
  Psychiatry 1973; 36 (4):684-690.
4) Ziegler DK, Hurwitz A, Hassanein RS, Kodanaz HA, Preskorn SH, Mason J.
  Migraine prophylaxis. A comparison of propranolol and amitriptyline. Arch Neurol
  1987; 44(5):486-489.
5) Tomkins GE, Jackson JL, O'Malley PG, Balden E, Santoro JE. Treatment of
  chronic headache with antidepressants: a meta-analysis. Am J Med 2001;
  111(1):54-63.
6) Mathew NT. Prophylaxis of migraine and mixed headache. A randomized
  controlled study. Headache 1981; 21(3):105-109.
7) Monro P, Swade C, Coppen A. Mianserin in the prophylaxis of migraine: a
  double-blind study. Acta Psychiatr Scand Suppl 1985; 320:98-103.
8) Battistella PA, Ruffilli R, Cernetti R, Pettenazzo A, Baldin L, Bertoli S et al.
  A placebo-controlled crossover trial using trazodone in pediatric migraine.
  Headache 1993; 33(1):36-39.
9) D'Amato CC, Pizza V, Marmolo T, Giordano E, Alfano V, Nasta A. Fluoxetine for
  migraine prophylaxis: a double-blind trial. Headache 1999; 39(10):716-719.
10) Bank J. A comparative study of amitriptyline and fluvoxamine in migraine
  prophylaxis. Headache 1994; 34(8):476-478.


検索式・参考にした
二次資料

{migraine} OR {vascular headache} OR {hemicrania}
&{treatament} OR {therapy} 8540
& antidepressant 331
& Amitriptyline 112
& Nortriptyline 60 (RCT 0)
& Imipramine 18  ( RCT 0 ) 
& Clomipramine 11
& Amoxapine 0
& setiptiline 0
& maprotiline 0 (LA - rus 1 あり )  ルジオミール
& Mianserin 9 件 テトラミド
& Trazodone 6 件  ( 小児片頭痛  1 )  デジレル
& paroxetine 14 件  ( RCT 0 )
& fluvoxamine 8 件  RCT0/
& Sulpiride 16 件  RCT 0
& Milanacipran
& Fluoxetine (Prozac) 41
 
重複,明らかな対象外の論文を除外して  139
→ エビデンスレベルを考慮して重要な文献 10 件を採択