においによって誘発される頭痛は片頭痛と片頭痛以外の一次性頭痛の鑑別要因になるか?

Silva-Neto RP, et al. May headache triggered by odors be regarded as a differentiating factor between migraine and other primary headaches? Cephalalgia 2017; 37:20-28

【目的】

におい、特に香水が片頭痛患者の28.8~70.0%で頭痛の誘因になると報告されている。また、におい過敏は片頭痛で多くみられるが、緊張型頭痛においてもいくつか報告がある。本文献では、嗅覚刺激が頭痛の誘因、また片頭痛と片頭痛以外の一次性頭痛との鑑別要因として特徴づけられるかを検討している。

【対象と方法】

前向き実験的群間比較研究である。 対象は、国際頭痛分類第3版beta版にもとづいて一次性頭痛と診断されたボランティア158例(男性73例、女性85例、22.7±3.1歳)で、最後の頭痛発作から48時間以上経過した被験者に花の芳香剤を60秒間吸入させ、その後の変化を24時間経過観察した。 本研究は、一次性頭痛の診断を行った者と、ボランティアに対してにおいを吸入させ、その効果を記録した者の2名で実施されている。

【結果】

158例のうち、72例(45.6%)が片頭痛(前兆のない片頭痛59例、前兆のある片頭痛13例)で、86例(54.4%)が片頭痛以外の一次性頭痛(反復性緊張型頭痛50例、一次性穿刺様頭痛19例、一次性運動時頭痛15例、性行為に伴う一次性頭痛2例)であった。 両群において頭痛の特徴は全く異なるものであった(χ2=4.132; p=0.046)。片頭痛群でのみ、においによって頭痛(25/72例; 34.7%)と悪心(5/72例; 6.9%)が誘発され、これは全体の19%(30/158例)であった。 片頭痛以外の一次性頭痛では、いずれも誘発されなかった(χ2=43.78; p<0.001)。においで頭痛が誘発された25例中、5例で悪心(p=0.146)、1例で光過敏、1例で光過敏と音過敏を随伴し、両側性(p=0.002)であることが多かった。 においの吸入から、頭痛は118±24.6分後に、悪心は72.8±84.7分後に誘発された。

【結論・コメント】

今回の検討では、においによる頭痛や悪心の誘発は、片頭痛患者でのみ確認された。 したがって、においによって頭痛が誘発されることは、片頭痛と片頭痛以外の一次性頭痛の鑑別要因となり、また、この誘発は片頭痛に非常に特異的であると考えられた。 においと片頭痛の相関について、国際頭痛分類第3版beta版に記載はないが日常診療では頻繁に経験される。 片頭痛を効率よく診断するために、においでの症状誘発や過敏性を意識することが大切であると考えられた。

文責:松森保彦(仙台頭痛脳神経クリニック)