Erenumabの反復性片頭痛に対する臨床試験

Goadsby PJ, et al. A controlled trial of erenumab for episodic migraine. N Engl J Med 2017;377:2123-2132.

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】

ErenumabはCGRP受容体に対する完全ヒトモノクローナル抗体であり、現在その片頭痛予防効果がSTRIVE (Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Erenumab in Migraine Prevention)と呼ばれる大規模臨床試験において検討されている。本論文では、反復性片頭痛 (episodic migraine: EM)に対する同薬の予防効果が報告されている。

【方法・結果】

北米、ヨーロッパ、トルコにおける121施設で施行された第III相臨床試験であり、患者は2015年7月~2016年9月にリクルートされた。 対象者はICHD-3βに記載されたEMの診断基準を満たす18~65歳の患者とした。ランダム化二重盲検で4週間に1回Erenumabを70 mgあるいは140 mgを投与する治療群とプラセボ投与群に1:1:1で割りつけられた。 一次評価項目は「治療期間4~6ヶ月間における月当たりの片頭痛を認めた平均日数のベースラインからの変化」とした。 二次評価項目は、「月当たりの片頭痛を認めた日数が50%以上減少した患者の割合 (%)」、「急性期片頭痛治療薬 (トリプタンあるいはエルゴタミン製剤)を用いた月当たりの平均日数のベースラインからの変化」、「片頭痛患者の日常生活機能への影響を示すMPFID-PIとMPFID-EAスコアのベースラインからの変化」に設定された。 955名の患者が登録され、317名がErenumab 70 mg (E70)群、319名がErenumab 140mg (E140)群、319名がプラセボ群に割り付けられた。 ベースラインの月当たりの頭痛を認めた平均日数は全体で8.3日であった。2.8%の患者で1種類の片頭痛予防薬が使用されていた。 一次評価項目に関しては、E70群で-3.2 ± 0.2、E140群で-3.7 ± 0.2、プラセボ群で-1.8 ± 0.2日であり、両治療群での変化量はプラセボ群に比較して有意な差を示した (P < 0.001)。月当たりの頭痛を認めた日数が50%以上減少した患者の割合のプラセボ群に比較したオッズ比は、E70群で2.1、E140群で2.8であった。 「急性期片頭痛治療薬 (トリプタンあるいはエルゴタミン製剤)を用いた月当たりの平均日数のベースラインからの変化」はE70群で-1.1 ± 0.1、E140群で-1.6 ± 0.1、プラセボ群で-0.2 ± 0.1日であり、両治療群での変化量はプラセボ群に比較して有意な差を示した (P < 0.001)。 なお、MPFID-PIとMPFID-EAスコアも両治療群ではプラセボ群に比較して有意差をもって改善を示していた。 有害事象に関しては、注射局所の疼痛がE70群で多く認められた。Erenumabに対する抗体産生はE70群の8.0%、E140 mgの3.2%に認めら、E70群の1名では中和抗体であることが判明した。 肝機能障害などについては群間差が確認されなかった。

【結論・コメント】

本研究によってErenumabのEMに対する効果と安全性が6ヶ月までの期間において確認された。 また、主要評価項目に関しては1ヶ月時点でプラセボ群と比較して有意差が認められていることから、Erenumabには速効性があることも示された。 本研究では2種類以上の片頭痛予防薬が無効であった症例が除かれているという制限があるものの、Erenumabが非常に効果の高い片頭痛予防薬であることが再確認されたといえる。