2次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛)

2次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛)

1) 軽症頭部外傷やスポーツ頭部外傷で頭痛が続くときは、薄い硬膜下血腫・硬膜外血腫もしくは小さな脳挫傷がある可能性があるので画像検査を受けましょう。
2) 頭部外傷後に頭痛が起こる場合に、頸椎捻挫を起こしていることがあります。
3) 高齢者や大酒家の頭痛の場合は慢性硬膜下血腫を起こしていることがあります。
4) いつもと違う突然の強い頭痛が生じた場合は、念のため病院に行きましょう。クモ膜下出血だったらこわいです。
5) 腫瘍(下垂体も含む)が原因で起こる頭痛
6) 強い後頚部の痛みの場合にまれですが動脈解離(特に椎骨動脈)があります。
7) 50歳以上の方でこめかみを中心とする頭痛が続くときは側頭動脈炎の可能性があります。

1) 軽症頭部外傷やスポーツ頭部外傷で頭痛が続くときは、薄い硬膜下血腫・硬膜外血腫もしくは小さな脳挫傷がある可能性があるので画像検査を受けましょう。

頭部外傷を生じた場合に通常、意識状態に問題なく、前後の状況がきちんとわかっている場合には、その外傷後に大きな異常を生じることは少ないです。一方で、15分以上の外傷前後の意識消失がある場合は、念のため頭部CT検査を受けた方が無難と思われます。
このような一般論がある中で、外傷当日は何となく問題なく経過したとしても、翌日以降に頭痛が続く場合があります。このような場合に、非常に少量ですが、頭蓋内出血を生じている場合がありますので、念のため、頭部CT検査をお受けになることとお勧めします。
特に、コンタクトスポーツである、ラグビー・サッカー・柔道・ボクシングなどのあとで、頭痛が継続する場合は、頭蓋内出血の有無をきちんと確認しておく必要があります。予約でもよいので、このようなスポーツをされたあとに頭痛が2日以上続く場合は、画像検査をした方がよいと思われます。頻度は少ないですが、最近、「二度目の衝撃症候群 (セカンド・インパクト症候群)」といって、一度目の頭部外傷があって、二度目は一度目より軽い頭部外傷でも、急性の脳浮腫を生じる場合があることが知られてきており、コンタクトスポーツでは特に注意が必要であるからです。
以上、頭部外傷後の頭痛の一般的注意点と、頭痛が受傷当日以降から数日続く場合は、注意して経過をみていただくことの説明を致しました。

2) 頭部外傷後に頭痛が起こる場合に、頸椎捻挫を起こしていることがあります。

頭部外傷直後には特に問題がなくても、数時間もしくは翌日以降になって、肩から首筋が痛くなってつらくなる場合が、時折、見かけます。運動麻痺や感覚障害もなく、この首筋の痛みのみが出現して困って、頭蓋内病変の有無の精査に神経内科や脳神経外科を受診される方がいらっしゃいますが、多くは、いわゆる「むち打ち損傷」を起こしているパターンが多いです。
むち打ち損傷は頭蓋内疾患等がないことを確認するため、頭部の精査が必要になることがありますが、この診断を受けた場合は、受傷後から1-2週間はなるべく無理をしないことが、症状を長引かせないために、最も重要と思われます。具体的には、両手に荷物をもって移動しない、頭を後に向けて一定時間固定するような動作(美容室でシャンプーをしてもらう姿勢が最もわかりやすいと思います)をなるべく取らないことが肝要です。
人によると元々、背骨の中に脊髄が入っている空間の狭い人がいます。これを脊柱管狭窄症といいますが、そのような人の場合は、外傷後に両手のしびれといった症状などがでやすいですので、頭痛のみならず、両手のしびれまで出現した場合は、頸椎のX線検査は受けた方が無難でしょう。
このように、頭部外傷後に頭痛が起こっても、頭蓋内疾患でない場合がありますので、頭痛の性状に注意して、病院を受診する場合は、「どのあたり(例えば、首の後など)」が「どのように(例えば、何となく張る感じがするなど)」を詳しく説明された方が宜しいかと思います。

3) 高齢者や大酒家の頭痛の場合は慢性硬膜下血腫を起こしていることがあります。

ヒトは加齢により、脳が徐々に生理的に萎縮していく傾向があります。多量の飲酒は脳萎縮を促進する方向に働きます。一般的には、年齢が70歳以上になりますと、それなりの脳萎縮が出現し出します。
また、多量の飲酒をしている方を「大酒家」と呼んでいますが、飲酒により、脳が萎縮する方向に働きやすいのと、肝臓に負担がかかっているため、ひどい場合は、肝臓で血液を凝固する方向に働く物質が作られにくくなって、出血しやすい状態になっていたりします。
上記のようなため、高齢者と大酒家の方が頭部外傷を起こした場合には、受傷当日の頭部CTに出血性病変を認めなくても、一部の人が1から3か月の経過で、徐々に脳と骨との間に液状の血液がゆっくりと貯留して、脳を圧迫して症状を出します。頭痛が最も出現しやすいですので、頭部外傷後1か月経過して頭痛が数日続くといった場合は念のため、頭部CT検査を受けた方がよいかもしれません。頭部外傷後1から3か月後に頭痛に嘔吐もあって、半身の手足の動きが悪いという場合は、必ず検査をお受けになってください。
このような遅れて脳と頭蓋骨との間に液状の血腫が貯留する疾患を慢性硬膜下血腫と呼んでいます。この疾患は手遅れにならなければ、外科的手術で極めてよくなる疾患ですので、頭部外傷後1から3か月の経過で、上記のような症状が続く場合は病院を受診されてください。

4) いつもと違う突然の強い頭痛が生じた場合は、念のため病院に行きましょう。クモ膜下出血だったらこわいです。

クモ膜下出血は、たいてい、脳表面とその脳を覆っているクモの巣をはったような膜に見えるため「クモ膜」と名前がついている膜組織との間にある「クモ膜下腔」という空間内に動脈があって、その動脈に瘤(こぶ)ができていて、その瘤から出血した状態をいいます。やぶけた瞬間に血液があふれ出るため、その勢いで、頭蓋骨と脳との間にある痛みを感知する膜(硬膜といいます)を刺激して突然に強い頭痛が出現します。突然に起こるため、意識のある人は、近くに時計があればいつ頃に生じたか確認したりしています。また、頭痛は、額側が痛かったり、後頭部が痛かったり、首筋が痛かったりと場所は一定していませんが、もともと頭痛持ちの人でも、今までに感じたことのない頭痛と表現することが多いです。
クモ膜下出血になった場合は、通常、約1/3の人が病院に来るまでに亡くなってしまい、病院にたどり着いても、一人できちんと歩いて帰ることができるのは1/3で、残りの1/3は麻痺が残ったり、寝たきりになったり、ひどい場合は死亡するというこわい病気ですので、上記のような突然の強い頭痛の場合は、念のためなるべく早期に頭部CT検査をお勧め致します。気を付けてください。
また、クモ膜下出血の場合は、頭痛以外に、嘔吐しやすい傾向がありますので、移動時には嘔吐症状に注意する必要があります。くれぐれも気を付けて受診されてください。

5) 腫瘍(下垂体も含む)が原因で起こる頭痛

脳腫瘍が原因で生じる頭痛は、頭蓋内の圧が高くなることで生じますので、夜寝ていて起きるときには、起きあがったままの状態と異なり重力の影響で頭蓋内の圧が低下していないため、その分頭蓋内圧が上がりやすくなっていることが多く、頭痛が比較的起こりやすいと言われています。
さらには、腫瘍ができている場所によっては、手足の動きが一部悪くなったり、しゃべりにくくなったり、忘れっぽくなったりといった頭痛以外の症状も出現することがあります。
毎朝、頭痛があって、起きあがって数時間で少し改善するなどという症状が継続して生じているようでしたら、念のためCT検査を行った方が良いかもしれません。
また、下垂体部に腫瘍がある場合に、この部分の腫瘍は良性のことが多いのですが、腫瘍内に出血する場合があり、その場合に、頭痛と目が見えにくくなる症状が突然起きたりすることがあります。この場合もCT検査をお受けになることをお勧め致します。
腫瘍は脳血管障害よりも頻度が少ないのですが、上記のような場合には念のため注意された方がよいので、病院を受診することをお勧め致します。

6) 強い後頚部の痛みの場合にまれですが動脈解離(特に椎骨動脈)があります。

首の後の付け根から後頭部にかけた部分に起る激痛の原因の中には、椎骨動脈の異常が関係していることがあります。痛みは突発的に起こり、右か左のどちらかに痛む場所は偏っています。
椎骨動脈は左右一対あり、背骨 (椎骨)の中を通って頭蓋骨の中へ入って、最終的に脳組織へ血液を送っています。血管の壁は3層から成り立っています。前述の椎骨動脈の異常というのは、血管壁の中に出血を起こした結果、壁の構造に裂け目が出来ることです。これは、難しい言葉ですが、専門的には動脈解離と呼ばれる現象です。出血部分が血管の内腔 (血液の流れている部分)に向かって突出すると血流が滞ってしまいます。逆に血管の外側に向かって突出するとコブみたいな状態になるので、これが破裂すると周囲に出血を起こします。そのようなコブを専門用語では解離性動脈瘤と呼んでいます。我々日本人では、椎骨動脈の解離は頭蓋骨の中で起こることが多いことが知られています。そのような場合、外方向への出血はくも膜下出血を引き起こすことになります。逆に血管の内腔へ飛び出ることで血流が障害されると、脳梗塞を引き起こすことがあります。特に、延髄と呼ばれる脳の部位に梗塞が起きる頻度が高いことが知られています。この場合、めまいやふらつきがある・声がかすれる・物が飲み込みにくい・顔面を含めて体の感覚機能がおかしいといった症状が起きます。したがって、前述のような頭痛に加えてこのような症状が起きた場合には、出来るだけ早く医療機関、特に神経内科や脳神経外科の専門医のいる病院を受診して下さい。
なお、椎骨動脈の解離は40歳代を中心とした若年層に好発します。首の無理な伸展や、マッサージなどによる物理的刺激が原因になります。中には、打ち上げ花火を見上げた瞬間に発症した症例もあります。椎骨動脈解離を診断するためには、MRアンギオグラフィー (MRA)や三次元CTアンギオグラフィー (3D-CTA)などを行う必要があります。また、専門的な治療が必要となる場合多いため、できるだけ脳卒中治療を行っている病院を受診することが望ましいです。

7) 50歳以上の方でこめかみを中心とする頭痛が続くときは側頭動脈炎の可能性があります。

側頭動脈炎は50歳を過ぎてからはじめて起こる持続性の頭痛を特徴としています。痛み方や強さは様々ですが、通常は決まった場所に起こります。耳の横からこめかみにかけてある「浅側頭動脈」に炎症が起こるとが多いため側頭動脈炎と呼ばれています。痛む場所はこめかみの辺りが最も多く、ほかに後頭部や耳、顎が痛くなることもあります。目に行く血管に炎症が起こることもあり、この場合は急に眼が見えなくなります。微熱や全身倦怠感、手足の痛みをよく伴います。血液検査では血沈という項目が異常高値を示します。超音波検査で血管が炎症を起こし狭くなっている様子を確認できることがあります。確定診断は、側頭動脈炎では炎症を起こした血管の一部を取って(生検)、顕微鏡で血管に炎症が起こっていることを確認して行います。
診断さえつけば側頭動脈炎の治療は難しくありません。一般的には入院が必要になりますが、ステロイドという薬を使うと痛みは数日で消えてしまいます。しかし痛みが消えても病気がぶり返さないためにステロイドを半年から1年ぐらいかけてゆっくり減らします。
欧米では多い国では500人に1人起こるほど一般的な病気ですが、日本では珍しい病気のため見逃されていることがあります。何ヶ月にも渡ってひどい頭痛があるのにもかかわらず、原因が分からないと言われて困っている年配の方は、この病気について病院でご相談するのが宜しいかと思います。