前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛でトピラマートの薬効に差異があるかを検討した初めての二重盲検試験の結果

Reuter U, et al. Migraines with and without aura and their response to preventive therapy with topiramate. Cephalalgia
2010;30:543-551.

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】

片頭痛予防に対するトピラマートの効果を6ヶ月間にわたって評価したPROMPT (the Prolonged Migraine Prevention)では、トピラマート (TOP)の有効性が確認されている。本研究は、PROMPTのpost hoc解析によって、前兆のある片頭痛患者 (MA)と前兆のない片頭痛患者 (MoA)との間の薬効の差異や前兆の発生に対する抑制効果を検討したものである。

【方法・結果】

片頭痛患者を対象に、4~8週間の観察期間を経て、26週間オープンラベル方式で全例にTOPを服用させた。その後、対象を二重盲検方式でTOP投与群とプラセボ投与群に分けてさらに26週間経過観察を行った。オープンラベル試験に入ったのは818例であったが、二重盲検試験登録時の患者数はTOP群253例とプラセボ群257例の併せて510例となっていた。
さらに、二重盲検試験を完遂したのは、TOP群210例とプラセボ群207例であり、脱落例が多く認められている。なお、二重盲検試験に登録された患者の病型の内訳であるが、TOP群ではMA89例・MoA164例、プラセボ群ではMA95例・MoA162例となっていた。
オープンラベル試験期間中は、前兆発生を認める患者の割合は26%から16%へと有意に低下した。二重盲検試験期間に入ってから最初の4週間に、両群とも前兆の発生は上昇したが、その後はオープンラベル試験中と同様のレベルが維持された。
MAにおける全片頭痛発作の出現回数は、オープンラベル試験期間中は-3.08/4週間の有意な低下が認められた。
このうち前兆のない発作の出現回数については、43.1%の低下を認めている。二重盲検試験期間に入ると、プラセボ群では前兆のない発作の回数は上昇し、TOP群との有意差が軽度に認められた。一方、前兆発生の低下率はオープンラベル試験期間中に54.1%に達した。全頭痛発作のなかで前兆のある発作の占める割合も、観察期間中の36.3%から31.1%に低下していたことからTOPの前兆発生に対する抑制効果は明らかであった。二重盲検試験期間においては、オープンラベル試験期間中と比較してTOP群・プラセボ群共に前兆の発生に変化を認めなかった。
MoAにおける片頭痛発作の回数は、オープンラベル試験期間に-2.25/4週間の有意な低下を認めた。オープンラベル試験期間の最後の4週間に注目すると、片頭痛発作回数の低下率は、MAとMoAではそれぞれ46.9%と44.3%であったことから、TOPの薬効は両群間でほぼ同様と考えられた。また、二重盲検試験期間ではMAと同様に、MoAでもプラセボ群で片頭痛発作回数は上昇し、TOP群と軽度の有意差が認められた。

【結論・解釈】

トピラマートは片頭痛の前兆の発生を抑制することが明らかにされた。
しかも、片頭痛発作発生の低減効果はMAとMoAに対して同程度に認められた。