日本人の群発頭痛の臨床的特徴を多数例を用いて明らかにした研究

Imai N., et al. Clinical profile of cluster headaches in Japan: Low prevalence of chronic cluster headache, and uncoupling of sense and behavior of restlessness. Cephalalgia 2011, doi: 10.1177/0333102410391486

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】

これまでの群発頭痛の臨床的特徴に関する報告は欧米人対象のものが多く、人種差に関する研究もほとんどなされていない。本研究では、日本人の群発頭痛の臨床的特徴を解析し、他人種におけるデータとの比較を行った。

【方法・結果】

国際頭痛分類第2版の群発頭痛の診断基準をもとに診断された86名(男性68名・女性18名)の群発頭痛患者を対象とした。平均年齢は38.4±12.2歳 (男性37.9±9.5歳・女性40.0±19.5歳)であり、発症年齢は31.0±13.8歳 (男性30.1±11.0歳・女性35.4±22.4歳)であった。発作性群発頭痛が83例で、慢性群発頭痛は3例のみであった。発症年齢のピークは、男性は20~30歳代にあり、女性は10~19歳と60~69歳の二相性を呈していた。全ての患者で、痛みは一側性であったが、右のみに発作を認める症例が、左のみの症例より多かった (45.3% vs 40.7%)。女性では、右側の痛みを呈する傾向が特に顕著であった (44.1% vs 27.8%)。痛みの部位としては、80%が眼窩後部であり、続いて側頭部52%、前頭部18.6%であった。痛みの強度はvisual analogue scale (VAS)で評価されたが、91.2%の症例では発作中は最強の痛みに達していると回答していた。発作中の自律神経症状に関しては、全体の66.3%が流涙を来たし、鼻汁分泌55.8%、結膜充血31.4%、鼻閉30.2%であった。その他の症状としては、落ち着きのなさが69.8%に認められた。動作による痛みの増悪は31.0%で経験されていた。また、悪心は39.5%に認められ、嘔吐に至る症例は15.1%であった。発作時間は、1時間以内16.3%、1~2時間46.5%、2~3時間26.7%であり、3時間を超える症例は3.5%と極めて少数であった。発作の時間帯は、ほぼ半数が夜間であったが、20.9%の症例では発作毎に一貫していない傾向を呈していた。

【結論】

日本人の群発頭痛の特徴として、慢性群発頭痛が欧米人と比較すると低頻度である点が明かとなった。また、今回認められた慢性群発頭痛患者はいずれも閉経年齢の女性であったことから、月経や女性特有のホルモン環境が慢性群発頭痛に対する保護因子として作用していることが推測された。発作中の落ち着きのなさは欧米人のデータと比較すると低い傾向にあり、これは台湾における研究と相同性を示していた。